Open Service Broker for さくらのクラウドでKubernetes + Service Catalog出来るようになりました
Open Service Broker for さくらのクラウド
Cloud Foundryやkubernetes-incubatorのservice catalog
でおなじみ?のOpen Service Broker API
をさくらのクラウド向けに実装しましたのでご紹介させていただきます。
Open Service Broker APIってなに?
Open Service Broker APIとは、Cloud Foundry由来のService Brokerの仕組みをkubernetesなどのCloud Foundry以外の環境でも利用できるようにHTTP APIの仕様を定めたものです。
その前にService Brokerってなに?
Service Broker(サービスブローカー)とは、プラットフォーム(Cloud FoundryやKubernetes)が外部のサービスやコンポーネントを使いやすくするための仕組み、、、です。
と言われてもこれではよくわかりませんね、、、ということで具体的な例を見ながらService Brokerとは何かを追っていきます。
例えばkubernetesでデータベースを使うには?
DockerやKubernetesなどを利用する場合、データベースやKVS、ストレージなどのステートフルなリソースの扱いは悩みどころです。
Kubernetesではこのようなステートフルな運用のためにStateful Sets
というものが用意されていますが、通常のステートレスなコンテナと比べると若干デプロイや運用が面倒です。
ということで、無理にKubernetes内で動かさずにRDSなどの外部のサービスの利用をすることも多いかと思います。
RDSなどの外部のサービスを利用する場合
データベースをk8s内で運用せず外部のサービスを利用する場合、概ね以下のような作業が必要となります。
- 利用するサービスの有効化(プロビジョニング)
- 払い出されたログイン情報などをKubernetes上のSecretsなどに登録
- ログイン情報を環境変数などでPodに渡す
この辺の作業はスクリプトなどである程度自動化することも可能ですが、利用するサービスごとに手順が異なったりしてなかなか大変です。
サービスごとに手順手順が異なるといった煩雑さに対し、統一したインターフェースを提供し手軽に扱えるようにすることがService Brokerの役割(のひとつ)です。
次にService Brokerがこれらの問題をどう解決するのか見ていきます。
Service Broker = 外部のサービスなどを仲介してくれる仲買人
イメージとしてはこんな感じです。
利用者と外部サービスとの間にブローカー(仲買人)が入ることで、利用者はブローカーにお願いするだけで済みます。
ブローカーも役割分担することで実装が簡単に
さらに、ブローカーは利用者からの依頼を管理する部分と実際のサービスの調達を行う部分に役割分担されています。
役割分担することで、サービスが増えても追加となったサービスの分だけを実装すればよく、多様なサービスに柔軟に対応できるようになります。
ここでもう一度: Open Service Broker APIとは?
そして、利用者からの依頼を管理する部分と実際のサービスの調達を行う部分についてのインターフェースを仕様として定めたものがOpen Service Broker API
です。
元々はCloud Foundryから始まった仕組みらしいのですが、Service Brokerが非常に便利な仕組みだったために
Kubernetesなど他のプラットフォームでも利用できるようにCF依存でないオープンな仕様としてOpen Service Broker API
が策定されたようです。
(Cloud Foundry周りにあまり詳しくないのでこの辺は後述の参考サイトなどを参照ください…)
Open Service Broker APIの策定はCloud Foundry Foundation (CFF)によってホストされており、現在のAPIバージョンは2.13
となっています。
このCFFにはFujitsu, Google, IBM, Pivotal, RedHat, SAPといったメンバーが参加しているとのことです。
ここには載っていませんが、Microsoft(Azure)についてもOpen Service Broker for Azure(OSBA)が活発に開発されています。
KubernetesとOpen Service Broker APIの関係は?
KubernetesにおいてもOpen Service Broker APIを利用するための仕組みが開発されています。
それがkubernetes-incubatorのService Catalogというものです。
Service Catalogは先ほどの図で言うと、利用者からの依頼を受け付ける仲介者の役割を担っています。
具体的にはService CatalogはKubernetesのカスタムリソースとしてServiceInstance
とServiceBinding
を追加し、それらを管理するコントローラー+APIサーバを提供してくれます。
つまり、Kubernetes利用者からは以下のようにkubectl
コマンドでリソースを追加することで、外部のサービスを利用できるようになります。
# こんな感じのyamlを用意(この例ではAzure上のMySQLを利用) $ cat example_service.yaml apiVersion: servicecatalog.k8s.io/v1beta1 kind: ServiceInstance metadata: name: example-mysql-instance namespace: default spec: clusterServiceClassExternalName: azure-mysql clusterServicePlanExternalName: basic50 parameters: location: eastus resourceGroup: demo firewallRules: - startIPAddress: "0.0.0.0" endIPAddress: "255.255.255.255" name: "AllowAll" # kubectlで投入 $ kubectl create -f example_service.yaml
これでAzure上のMySQL(Azure Database for MySQL)のインスタンスが作成されます。
このMySQLを各Podなどから利用できるようにするためのクレデンシャルの発行を以下のように行うことができます。
(なお、このインスタンス作成のことをProvisioning
、クレデンシャルの発行(仕様上は以外も出来ますが)をBinding
と呼びます)
# Azure Database for MySQLへのアクセス用クレデンシャル発行 & Kubernetesのsecretに格納 $ cat example_binding.yaml apiVersion: servicecatalog.k8s.io/v1beta1 kind: ServiceBinding metadata: name: example-mysql-binding namespace: default spec: instanceRef: name: example-mysql-instance # 先ほど作成したインスタンスを指定 secretName: example-mysql-secret # クレデンシャルの格納先となるsecret名を指定 # こちらもkubectl経由で投入 $ kubectl create -f example_binding.yaml
各PodではSecretを参照することでデータベースのホスト名/データベース名/ユーザー名/パスワードなどを知ることができます。
kubernetes上で完結できるので、例えばHelm chartとしてきちんと永続化したいデータを持つアプリなどの配布を行う際に非常に便利に使えます。
本題: Open Service Broker for さくらのクラウド
そして今回実装したのがService Catalogから依頼を受けて実際にサービスを調達する部分です。
これを利用することでkubernetesからさくらのクラウド上のマネージドなサービスを利用することが容易になります。
先ほどのAzureの例のように、kubectl
コマンドからさくらのクラウド上のマネージドDBであるデータベースアプライアンスを作成できます。
ということで早速使い方を紹介します。
Open Service Broker for さくらのクラウドの使い方
準備
まずはさくらのクラウド上のVPC内にKubernetesクラスタを構築する必要があります。
なぜVPC内にKubernetesクラスタが必要かと言うと、さくらのクラウドのデータベースアプライアンスがVPC内(正確にはスイッチさえ繋げばOK)に置く必要があるためです。
Kubernetes(内のPod)から繋ぎたいため、必然的にVPC内にクラスタを置く必要があります。
クラスタを持っていない方はDocker for WindowsまたはDocker for MacでもOKです。
その場合、L2TP/IPSecなどでVPCルータに対してVPN接続を行っておきましょう。
インストール
Helmのインストール
まずはKubernetesのパッケージ管理ツールであるHelmをインストールします。
macOSの場合はhomebrew、Windowsの場合はChocolateyでインストール可能です
# macの例 $ brew install kubernetes-helm
インストールしたらhelm init
を実行しておきます。
$ helm init
Service Catalogのインストール
続いてHelmでService Catalogのインストールを行います。
# HelmにService Catalog用のリポジトリを追加 $ helm repo add svc-cat https://svc-catalog-charts.storage.googleapis.com $ Service Catalogのインストール(ネームスペースは"catalog"としておく) helm install svc-cat/catalog --name catalog --namespace catalog
(オプション) Service Catalog CLIのインストール
必須ではないですが、Service Catalog専用のCLI(svcat
)をインストールしておくと詳細な情報が参照できて便利です。
CLIを試してみたい方はドキュメントを参考にインストールしてみてください。
Open Service Broker for さくらのクラウドのインストール
続いてHelmでOpen Service Broker for さくらのクラウドのインストールを行います。
さくらのクラウドのAPIキーが必要となりますので、発行していない方はコントロールパネルなどから発行しておいてください。
APIキーは以下のように環境変数に設定しておきます(インストール時の入力を楽にするためです)。
$ export SAKURACLOUD_ACCESS_TOKEN=<your-api-token> $ export SAKURACLOUD_ACCESS_TOKEN_SECRET=<your-api-secret> $ export SAKURACLOUD_ZONE=<your-zone>
続いてHelmでインストールを行います。
# HelmにOpen Service Broker for さくらのクラウド用のリポジトリを追加 $ helm repo add sacloud https://sacloud.github.io/helm-charts/ # Open Service Broker for さくらのクラウドのインストール(ネームスペースは"osbs"としておく) $ helm install sacloud/open-service-broker-sacloud --name osbs --namespace osbs \ --set sacloud.accessToken=$SAKURACLOUD_ACCESS_TOKEN \ --set sacloud.accessTokenSecret=$SAKURACLOUD_ACCESS_TOKEN_SECRET \ --set sacloud.zone=$SAKURACLOUD_ZONE
インストール後はkubectl get pod --namespace=osbs
を実行して動いているか確認しましょう。
# STATUSがRUNNING、かつREADYが1/1になっていることを確認しておく $ kubectl get pod --namespace=osbs NAME READY STATUS RESTARTS AGE osbs-open-service-broker-sacloud-xxxxxxxx-xxxxx 1/1 Running 0 7h
kubectl
コマンドでデータベースアプライアンスを作成してみる
それでは早速データベースアプライアンスを作成してみましょう。
現時点では以下2種類をサポートしています。
- MariaDB 10.2
- PostgreSQL 9.6
今回は例としてMariaDBを作成してみます。
まず以下のようなyamlファイルを用意します。
apiVersion: servicecatalog.k8s.io/v1beta1 kind: ServiceInstance metadata: name: my-mariadb-instance namespace: default spec: clusterServiceClassExternalName: sacloud-mariadb clusterServicePlanExternalName: db-10g parameters: switchID: <VPC内のスイッチのID> ipaddress: "<データベースに割り当てるIPアドレス>" maskLen: <データベースのネットワークマスク長> defaultRoute: "<データベースのデフォルトルートIPアドレス>"
さくらのクラウド上のスイッチのIDとデータベースに割り当てるIPアドレス関連の記入が必要です。
記入したらkubectl
コマンドを実行します。
kubectl create -f <作成したyamlファイル>
うまくいきましたね?
しばらく待つとさくらのクラウド上に新しいデータベースアプライアンスが作成されているはずです。
数分かかりますので気長に待ちましょう。
svcat
コマンドをインストールしている場合は以下のコマンドで作成状況を確認できます。
$ svcat get instances
作成したデータベース上にアカウントを作成してみる
次に、Podなどから利用できるようにデータベース上に新たなアカウントを発行し、Kubernetesのsecretにクレデンシャルを登録します。
こちらも先ほどと同じくyamlファイルを作成してkubectl
コマンドを実行することで行えます。
apiVersion: servicecatalog.k8s.io/v1beta1 kind: ServiceBinding metadata: name: my-mariadb-binding namespace: default spec: instanceRef: name: my-mariadb-instance secretName: my-mariadb-secret
$ kubectl create -f <作成したyamlファイル>
kubectl
を実行すると、my-mariadb-secret
という名前でデータベースへのログイン情報(クレデンシャル)が登録されているはずです。
# secretに登録されたクレデンシャルの確認 $ kubectl get secret my-mariadb-secret
なおsecretはBASE64エンコードされていますので、復号して生データを見たい場合は以下のコマンドを実行しましょう。
$ echo <BASE64エンコードされた文字列> | base64 -D
あとは各Podからsecretの値を参照すればOKです。マネージドなデータベースがこれだけで使えるようになるのは便利ですよね!!!
応用: 作成したデータベースを利用する例
応用例としてService Broker for さくらのクラウドを利用するhelm chartを作成してみました。
イケてるデータ可視化ツールであるMetabase
をインストールする例となっています。
Metabaseのバックエンドとしてさくらのクラウドのデータベースアプライアンスを利用、データベースアプライアンスはOpen Service Broker for さくらのクラウドが管理します。
# 応用例のインストール $ helm install --name my-release sacloud/metabase \ --set database.switchID=<your-switch-id> \ --set database.ipaddress=<your-db-ip> \ --set database.maskLen=<your-db-network-mask-len> \ --set database.defaultRoute=<your-db-default-route-ip>
詳細はChartの内容をみていただければと思いますが、ちゃんと永続化したいデータを伴う構成でもHelmで手軽に配布できるようになっています。
終わりに
ということで今回はOpen Service Broker for さくらのクラウドについて紹介しました。
Open Service Broker/Service Catalogは非常に便利ですのでぜひ使ってみてください!!
以上です。
参考記事
この記事を書くのに以下の記事/スライドを大いに参考にさせていただきました。
Service Brokerの仕組みについてはこちらの資料を読むのがおすすめです。
Arukasで任意のコマンドを実行する「Rarukas」 - 雲の向こうの使い捨てコンテナ
2018/2/20にArukasのβサービスが再開しましたね!!待ってました!!!
ということで早速使ってみました。
何が変わったの?
GitHubアカウントでのサインイン/サインアップは廃止
先ほどのお知らせにも書かれていましたが、GitHubアカウントでのサインアップが廃止されていました。
以前のArukasでアカウントを持っていた場合でも再作成となるようです。
以下ページからサインアップを行いました。
現在は予約制となっており、サインアップ後に登録可能な状態になったら招待メールが届きます。
(私の時は30分程度で届きました)
4つのプランの中から選択が可能に
課金体系についても公開されていました。
スペックやインスタンス数の制限などの違いで以下4つのプランがあるとのことです。
名称 | vCPU | RAM | 価格 | 概要 |
---|---|---|---|---|
Free |
0.1 | 128MB | 無料 | 同時に起動できるコンテナーインスタンスは一つだけ |
Hobby |
0.1 | 512MB | 0.74円/h |
FreeプランとCPU性能は同じ、RAMサイズ増 |
Standard x1 |
0.5 | 512MB | 1.48円/h |
HobbyプランからvCPU増 |
Standard x2 |
0.5 | 1024MB | 2.96円/h |
Standard x1プランからRAMサイズ増 |
なお、Free
プラン以外を一度でも起動した月は基本料金として月額50円上乗せされるとのことです。
APIも結構変わった
また、サービス再開に合わせてAPIについても更新されていました。
認証や必要なヘッダなどについては変更ないようですが、リソース名やリソースの内容についてはだいぶ変わっています。
例: app_sets
とかは無くなりました。
旧Arukas APIを利用していた場合は変更が必要でしょう。
取り急ぎGo言語についてAPIライブラリを作成しておきましたのでぜひご利用ください。
APIライブラリを作ったらアプリも欲しくなりましたのでとりあえず作っておきました。
Arukasで任意のコマンドを実行する「Rarukas」コマンド
shell(sh)に対するremote-shell(rsh)みたいに、Arukasでもっと手軽にコマンド実行したいなーということでremote-arukas = rarukas
というコマンド作りました。
GitHub: rarukas - CLI for running one-off command(s) on Arukas
Go言語で書いてますので、インストールはバイナリをGitHubからダウンロードして実行権付与するだけです。
ダウンロードは以下のGitHub Releasesページから行えます。
以下のような感じで任意のコマンドをArukas上のコンテナで実行可能です。
コンテナはオンデマンドに作成され、コマンド実行が終了すると破棄されます。エコですね!!
# 事前にAPIキーを環境変数に設定(コマンドラインオプションでも指定可) $ export ARUKAS_JSON_API_TOKEN=<APIトークン> $ export ARUKAS_JSON_API_SECRET=<APIシークレット> # Arukas上でcurlコマンドを実行 $ rarukas curl -L https://arukas.io/
動きとしてはこんな感じです。
- SSH用のキーペアを生成(オプション指定でキーの指定もできる)
- Arukas APIでコンテナ作成 & 起動、SSH用の公開鍵をArukas API経由でコンテナに渡す
(起動するコンテナはRarukas
側で用意したSSH/SCP可能なイメージを利用してます) - (任意)コンテナが起動したらSCPでローカルのファイルをコンテナのworkdirへアップロード
- コンテナ上で指定のコマンド実行
- (任意)コンテナ上のworkdirをローカルにダウンロード
- Arukas APIでコンテナ破棄
実行したいコマンドはファイルでの指定もできる
実行したいコマンドはファイルでの指定も可能になっています。
例えばローカルマシンにrun_on_arukas.sh
というスクリプトを用意しておいて、以下のようにオプション指定すればOKです。
お好きなシェルスクリプトが利用できます!
# 実行したいコマンドを別ファイルで指定 rarukas -c run_on_arukas.sh
ローカルマシンのファイルをアップロード/コマンド実行後にコンテナからダウンロード
さらにはSCP経由でファイル/ディレクトリのやりとりができるため、
- ローカルの処理したいデータをアップロード
- Arukas上で加工
- 加工したデータをローカルにダウンロード
ということもできます。
このために--sync-dir
というオプションを用意しており、これで指定したディレクトリをコマンド実行前にアップロード、コマンド実行後にダウンロードしてくれるようになります。
# カレントディレクトリの内容をアップロード/コマンド実行で生成されたファイルをダウンロード $ rarukas --sync-dir . "echo from-arukas > result.txt" # ローカルマシンにコンテナ上で生成されたファイルがダウンロードされている $ ls result.txt
ベースイメージの選択ができる
Arukas上で起動するコンテナのベースイメージはデフォルトでは軽量なalpine
ベースですが、実行したいコマンドに応じて以下のようなものを指定できます。
alpine
: デフォルト、alpineベースの軽量イメージcentos
: CentOS7ベースubuntu
: Ubuntu 16.04ベースansible
: Ansible実行用のalpineベースイメージsacloud
: さくらのクラウド系ツール(usacloud
やterraform
、packer
など)の実行用イメージ、alpineベース
ベースイメージはオプション指定することで変更できます。
# ubuntuベースのイメージを利用する場合 rarukas --type ubuntu <your-command>
どんな時に使うの?
バッチ処理のオフロードや多少時間がかかってもいいから自分のマシンの負荷を上げたくない時などに便利です。
rarukas
コマンドでArukasコンテナを起動するのには早くて10〜20秒、負荷状況によってはもう少しかかることもあるため速度を求める処理には向きませんが、
複数のコンテナに分散して並列に処理できるような場面では真価を発揮します。
利用例: 10コンテナでコマンドを分散/並列実行
以下のように xargs
などと組み合わせることで任意の処理を複数のコンテナに分散/並列実行できます。
この例ではecho Hello World from Rarukas -(連番)
というコマンドを10台に分散/並列実行しています。
(複数インスタンスの利用となるため、--plan
オプションでhobby
プランを利用するように指定)
# 10コンテナに分散してコマンド実行 $ seq 10 | xargs -P10 -n1 rarukas --plan hobby echo Hello from Rarukas -$1
これを実行すると以下のような表示になるはずです。
ただし、並列実行のため順序は保証されませんので多少出力順が異なる可能性があります。
# 見やすくするために標準エラー出力は除いています Hello from Rarukas - 2 Hello from Rarukas - 9 Hello from Rarukas - 4 Hello from Rarukas - 1 Hello from Rarukas - 8 Hello from Rarukas - 3 Hello from Rarukas - 7 Hello from Rarukas - 10 Hello from Rarukas - 5 Hello from Rarukas - 6
利用例: Ansibleで複数マシンのプロビジョニングやレポート作成を分散/並列実行
先ほども出てきましたが、ansible
コマンドを実行できるイメージを用意しています。
これを利用すれば自マシンに負荷をかけることなく大量のサーバのプロビジョニングも行えますね。
まずはインベントリファイルやSSH用の秘密鍵などを準備しておきます。
この例ではプロビジョニング対象の各サーバ毎にインベントリファイル&秘密鍵を用意するようにしています。
# 対象のサーバ毎にインベントリファイルと秘密鍵を準備 $ tree . . ├── host1 │ ├── ansible.cfg │ ├── hosts │ └── private_key ├── host2 │ ├── ansible.cfg │ ├── hosts │ └── private_key ├── host3 │ ├── ansible.cfg │ ├── hosts │ └── private_key ├── host4 │ ├── ansible.cfg │ ├── hosts │ └── private_key └── host5 ├── ansible.cfg ├── hosts └── private_key # バックグラウンドでrarukasコマンド起動(5台分) $ rarukas --type ansible --plan hobby --sync-dir host1 ansible host1 -i hosts -m setup --tree ./ & $ rarukas --type ansible --plan hobby --sync-dir host2 ansible host2 -i hosts -m setup --tree ./ & $ rarukas --type ansible --plan hobby --sync-dir host3 ansible host3 -i hosts -m setup --tree ./ & $ rarukas --type ansible --plan hobby --sync-dir host4 ansible host4 -i hosts -m setup --tree ./ & $ rarukas --type ansible --plan hobby --sync-dir host5 ansible host5 -i hosts -m setup --tree ./ &
他にも大容量のファイルのファイルのダウンロード -> 他のサーバへ送信といったように自マシンやネットワークの負荷を軽減するような使い方もありますね。 色々応用できると思います。
でもお高いんでしょ?
Rarukas
を使うことで手軽にコンテナを使い捨てできますが、その際に心配なのがやっぱり料金ですね。
例えば1台あたり10分かかる処理を10台で行なったとすると、1実行あたり100分、毎日1回実行とすると30日で3,000分 = 50時間ですね。
Hobbyプランだと時間あたり 0.74円
ですので、月額利用料としては
@0.74円 × 50時間 + 基本料金50円 = 87円
なんと、87円!!!
87円ですよ!!これはお安いですね!!!
ちなみに、公式サイトの料金の部分に「課金は秒単位」と記載があるので、ちょっとだけ起動して破棄する = 使い捨てる運用にもってこいですね!!
ということでコンテナ使い捨てにRarukas
は非常にお手軽です。
是非ご利用くださいー!!
終わりに
Arukasは3/19までは無料で利用できるとのことです。
この機会に一度試してみてはいかがでしょうか?
その際は是非Rarukas
コマンドもよろしくお願いします!!
以上です。
【さくらのクラウド】baserCMS用のスタートアップスクリプトを使ってみた
baserCMSがさくらのクラウドと連携し、baserCMS環境を簡単に構築できるスタートアップスクリプトが追加されたとのニュースが出ていました。
baserCMSニュース: IaaS型クラウド「さくらのクラウド」に、baserCMSのスタートアップスクリプトが搭載
baserCMSはオープンソースカンファレンス(OSC)などで度々見かけてはいたものの、なかなか手を出せていなかったのでこの機会に試してみました。
baserCMSってなに?
この辺はやはり公式サイトにバッチリ書いていました。
公式サイトの紹介文には以下のような特徴が挙げられています。
- 日本人が日本人の為に開発している国産CMS(コンテンツマネージメントシステム)
- CakePHPをベースとしているので、カスタマイズ性、メンテナンス性が高い
- メールフォームや新着ブログなどのプラグインや管理画面の枠組みを最初から装備
- スマートフォーンや携帯サイトにも対応
- マニュアルやソースコードのコメントが日本語
ライセンスはMITだそうです。
ざっと公式サイトを見ましたが、ドキュメントが非常に充実しているなーという印象です。
baserCMSのインストール
スタートアップスクリプトの前に、通常のbaserCMSのインストール手順を確認してみました。
インストール手順は公式サイトのはじめてガイドの中に導入マニュアルがまとめられています。
通常のインストール手順としては
- (1) baserCMSのソース一式をダウンロード
- (2) サーバにアップロード
- (3) ブラウザでインストーラーページを開く
- 必要に応じてWebサーバの設定変更など
- (4) データベースの選択(MySQL/PostgreSQL/SQLite3が選べる)
- (5) 管理ユーザーの登録
という流れです。多くのCMSと同じ流れですね。
慣れている方であればすぐに設置可能でしょう。
baserCMS用のスタートアップスクリプトは何をしてくれるの?
スクリプトを眺めると、先ほどのインストール手順を一気に行ってくれるもののようです。
割と面倒なWebサーバや関連ライブラリのインストール、DBのセットアップ、意外と忘れがちなサーバのタイムゾーンの設定などを行っています。
これを利用すればインストールが非常に楽になりそうです。
ということで早速スタートアップスクリプトを利用してbaserCMSをインストールしてみます。
さくらのクラウドでbaserCMS用スタートアップを利用
手順としては以下の通りです。
まずはさくらのクラウドのコントロールパネルにアクセスします。
アカウントをお持ちでない場合はこちらからアカウント開設を行っておきます。
1) IaaS画面へ遷移
ログイン後表示される画面でIaaS
を選択します。
2) ゾーン選択 -> サーバ作成画面へ
次に対象のゾーンを選択します(以下図の①)。ゾーンによって価格が若干異なりますのでお好みのゾーンを選択してください。
ゾーン選択後にサーバ管理画面を開き(図の②)、右上の方にある「追加」ボタン(図の③)をクリックします。
3) サーバ作成画面でシンプルモードのチェックを外す
デフォルトではシンプルモードという、簡易選択画面になっていると思います。
スタートアップスクリプトはシンプルモードでは選択できませんのでチェックを外しておきます。
4) サーバのスペック選択(CPU/メモリ/ディスクなど)
続いて作成するサーバのスペックを選択します。
CPUとメモリについては後から変更可能ですので最初は適当に選べば良いと思います。
(baserCMSのドキュメントを確認しましたが、特に推奨スペックは記載がなさそうでした…)
また、baserCMSのスタートアップスクリプトはCentOS7のみ対応ということですので、ディスクについては
- ディスクソースは
アーカイブ
を選択 - アーカイブ選択では
CentOS7
を選択
としてください。
ディスクサイズについてですが、こちらは先ほどのCPU/メモリと異なり、増設するのに若干の作業が必要となります。
(別ディスクを増設する or より大きいサイズのディスクにコピーして移行など)
なので、ある程度のディスク利用が見込める場合は最初から大きめにしておくのがオススメです。
5) ディスクの修正
続いて「ディスクの修正」という欄に入力を行なっていきます。
まずサーバのrootユーザのパスワードを入力します。
本番運用するサーバであればここで公開鍵を登録しておくべきなのですが、今回は省略しています。
なるべく登録をお勧めします。
そしていよいよスタートアップスクリプトの設定を行います。
スタートアップスクリプトとしてshell
を選択すると、スクリプト一覧のリストが表示されます。
この中からbaserCMS
を選択します。
6) baserCMS関連の設定
baserCMS
スタートアップスクリプトを選択すると、その下部にbaserCMS関連の設定項目を入力する欄が表示されます。
以下3つは必須となっていますので忘れずに入力してください。
- baserCMS 管理ユーザー名
- baserCMS 管理ユーザーのパスワード
- baserCMS 管理ユーザのメールアドレス
ここで入力したユーザー名/パスワードは、後ほどbaserCMSの管理画面にログインする際に利用します。
サーバ作成画面にはその他入力項目もありますが、適当に入力してください。
最後に画面下部にある「作成」ボタンを押せばサーバ作成が行われます。 作成完了まで数分かかることもありますので少し待ちましょう。
動作確認!!
サーバ作成はうまくいきましたね?
それでは早速baserCMSの画面を開いてみましょう。
まずはさくらのクラウドのコントロールパネルから、作成されたサーバのグローバルIPアドレスを確認します。
サーバ一覧画面にサーバのグローバルIPが表示されていますので控えておきます。
(右クリックするとIPアドレスのコピーができますよ!)
あとはブラウザから以下URLをひらけばbaserCMSのトップページが表示されるはずです。
- 公開画面:
http://<サーバのグローバルIP>/
- 管理者画面:
http://<サーバのグローバルIP>/admin
公開画面トップページ
管理者ログイン画面
管理者ダッシュボード
ということでbaserCMS環境が非常に簡単に構築できました。
あとは公式サイトの導入マニュアルを参照しながらカスタマイズしていくだけですね。
導入マニュアルには「インストールあとのはじめの一歩」というページにどのような設定を行えば良いのかについてまとめられていますので、インストール後はこちらもご参照ください。
以上です。Enjoy!!
【さくらのクラウド】TerraformでWindowsの展開を自動化する
はじめに
今回はTerraform for さくらのクラウドを用いてWindows Serverの展開を自動化する方法をご紹介します。
さくらのクラウドではWindows Serverのセットアップを行うにはコントロールパネルからコンソール接続を行う必要がありましたが、
この方法を使えばterraform
コマンドだけで一気に展開可能です。
なお、今回の方法は残念ながらリソースマネージャーには非対応です。
terraform
コマンドを直接使う方向けとなっています。
背景
まずはさくらのクラウドでのWindows Serverプランの扱いについて確認しておきます。
さくらのクラウドのWindows Serverプラン
さくらのクラウドではWindows Serverプランが提供されています。
Datacenter EditionやRDS、さらにはOffice付きのものやSQLServerインストール済みのものまで様々なプランがあります。
さくらのクラウドのWindows Serverプランの仕様
便利なWindows Serverプランなのですが、その他のLinux系OSなどとは異なる仕様がいくつかあります。
例えばディスクサイズは100GB以上が要求されることなどがあります。
その中でも構築の自動化の際に大きく関わってくる仕様として「ディスクの修正が一部項目のみ対応」というものがあります。
「ディスクの修正」とは
さくらのクラウドでは各サーバ固有の設定(グローバルIPアドレスやホスト名、管理者パスワードなど)はディスクの修正という機能で各サーバ(のディスク)に設定されます。
SSH用の公開鍵の登録やスタートアップスクリプトなどもこのディスクの修正で反映できるようになっています。
設定できる項目は以下の通りです。
しかしWindows Serverプランではこのディスクの修正機能が一部のみしか利用できないという仕様になっています。
Windows Serverプランでのディスクの修正機能
Windows Serverプランの場合、ディスクの修正機能で設定可能な項目は以下のみとなっています。
- IPアドレス、ネットマスク、デフォルトゲートウェイ
また、パブリックアーカイブからの新規作成時のみディスク修正が行えるという制限もあります。
つまり、Windows Serverプランを利用する場合はサーバ作成後にコントロールパネルからサーバのコンソールを利用して管理者パスワードの設定などの初期設定を手作業で行う必要があります。
(一応VNCも使えます。usacloudからだとusacloud server vnc <your-server-name>
でOK)
これが数台程度であれば良いですが、数十〜数百台となってくるとブラウザから手作業で構築するのは非常に大変な作業となります。
そこで何か自動化する手段は無いか、、、ということで自動化する方法を考えました。
Windows展開の自動化といえばsysprep+応答ファイル
Windows環境構築の自動化といえばsysprep+応答ファイルという方法がありますね。
実はさくらのクラウドで提供されているWindowsパブリックアーカイブはISOイメージからのインストール直後の状態ではなく、NIC用のVirtIOドライバなどがインストールされた状態となっており、起動直後はわずかな入力を行うだけで直ぐに利用できる状態となります。 (おそらくさくらのクラウド側であらかじめある程度構築後にsysprepされた状態になっているのでしょう)
なので、応答ファイルもごく一部の項目のみ作成すればOKとなっています。 具体的には最低限以下の設定をすれば直ぐにリモートデスクトップ接続ができる状態に持っていけます。
これにchocolatey
などをインストールするスクリプトを仕込めば一気に環境構築できそうです。
応答ファイルはサーバにどうやって渡す? -> ISOイメージを使う
応答ファイルを作成しておけば構築の自動化はできそうですが、サーバ作成時にどうやって応答ファイルを渡せば良いでしょうか? いくつか方法はありますが、さくらのクラウドではISOイメージのアップロードに対応していますのでこれを利用してあげれば良いでしょう。
以下のドキュメントにも記載がありますが、応答ファイルをUnattend.xml
という名前でリムーバブルメディアのドライブのルートにおいておけば初回起動時に参照してくれます。
なので、応答ファイルを格納したISOイメージを作成し、サーバ作成時にISOイメージを挿入した状態で起動すれば良さそうですね。
Terraform for さくらのクラウドならISOイメージも一発構築
Terraform for さくらのクラウドはISOイメージの作成もサポートしています。
ISOイメージの作成処理はGo言語のみで実装していますのでTerraformを実行するのがWindowsの場合でも問題なくISOイメージの作成が行えます。
また、ISOイメージに格納する応答ファイルUnattend.xml
についてはTerraformの変数やテンプレート機能を活用すれば作成できますね。
ということで実際にTerraform for さくらのクラウドで自動化を行なってみます。
構築
Windows Server向け環境構築用のtfファイル
tfファイルは以下のようになります。
### 概要 # Windows Serverの初期設定を行うテンプレート # # このテンプレートはWindows Serverの管理者パスワードの設定や任意のスクリプトの実行を行うテンプレートです。 # 初期設定は応答ファイル(Unattend.xml)を格納したISOイメージをサーバにアタッチすることで行なっています。 # ### 変数定義 # サーバ管理者(Administrator)のパスワード variable password {} locals { #********************************************* # プロビジョニング #********************************************* # サーバ上で実行したいコマンドを指定 run_commands = [ # パッケージマネージャー"chocolatey"のインストール "powershell -Command \"Set-ExecutionPolicy Bypass -Scope Process -Force; iex ((New-Object System.Net.WebClient).DownloadString('https://chocolatey.org/install.ps1'))\"", # chocolateyでChromeをインストール "C:\\ProgramData\\chocolatey\\bin\\choco.exe install -y googlechrome", ] #********************************************* # サーバ/ディスク #********************************************* # 利用するアーカイブ種別: 指定できる値についてはTerraform for さくらのクラウドのマニュアルを参照してください os_type = "windows2016" # サーバ名 server_name = "windows-server" # ホスト名(コンピューター名) host_name = "windows-server" # サーバ コア数 server_core = 2 # サーバ メモリサイズ(GB) server_memory = 4 # ディスクサイズ(100GB以上) disk_size = 100 } ### 構成構築 # 利用するアーカイブ data sakuracloud_archive "windows" { os_type = "${local.os_type}" } # ディスク resource "sakuracloud_disk" "disk" { name = "${local.server_name}" size = "${local.disk_size}" source_archive_id = "${data.sakuracloud_archive.windows.id}" lifecycle { ignore_changes = ["source_archive_id"] } } # サーバ resource "sakuracloud_server" "server" { name = "${local.server_name}" disks = ["${sakuracloud_disk.disk.id}"] core = "${local.server_core}" memory = "${local.server_memory}" cdrom_id = "${sakuracloud_cdrom.settings.id}" } # ISOイメージ(応答ファイル用) resource sakuracloud_cdrom "settings" { name = "${local.server_name}" # 単一ファイルを内包するISOイメージを作成する content = "${local.unattend_body}" content_file_name = "Unattend.xml" } # 応答ファイルの組み立て locals { command_elm_format = <<EOL <SynchronousCommand wcm:action="add"> <Order>$${index}</Order> <CommandLine>$${body}</CommandLine> </SynchronousCommand> EOL commands_format = <<EOL <FirstLogonCommands> %s </FirstLogonCommands> EOL commands_body = "${length(local.run_commands) > 0 ? format(local.commands_format, join("", data.template_file.run_commands.*.rendered)) : "" }" } data template_file "run_commands" { count = "${length(local.run_commands)}" template = "${local.command_elm_format}" vars = { index = "${count.index + 1}" body = "${local.run_commands[count.index]}" } } locals { unattend_body = <<EOL <?xml version="1.0" encoding="utf-8"?> <unattend xmlns="urn:schemas-microsoft-com:unattend"> <settings pass="oobeSystem"> <component name="Microsoft-Windows-Shell-Setup" processorArchitecture="amd64" publicKeyToken="31bf3856ad364e35" language="neutral" versionScope="nonSxS" xmlns:wcm="http://schemas.microsoft.com/WMIConfig/2002/State" xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance"> <OOBE> <HideEULAPage>true</HideEULAPage> </OOBE> <UserAccounts> <AdministratorPassword> <Value>${var.password}</Value> <PlainText>true</PlainText> </AdministratorPassword> </UserAccounts> <AutoLogon> <Password> <Value>${var.password}</Value> <PlainText>true</PlainText> </Password> <Enabled>true</Enabled> <LogonCount>1</LogonCount> <Username>Administrator</Username> </AutoLogon> ${local.commands_body} </component> <component name="Microsoft-Windows-International-Core" processorArchitecture="amd64" publicKeyToken="31bf3856ad364e35" language="neutral" versionScope="nonSxS" xmlns:wcm="http://schemas.microsoft.com/WMIConfig/2002/State" xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance"> <InputLocale>0411:E0010411</InputLocale> <SystemLocale>ja-JP</SystemLocale> <UILanguage>ja-JP</UILanguage> <UILanguageFallback>ja-JP</UILanguageFallback> <UserLocale>ja-JP</UserLocale> </component> </settings> <settings pass="specialize"> <component name="Microsoft-Windows-Shell-Setup" processorArchitecture="amd64" publicKeyToken="31bf3856ad364e35" language="neutral" versionScope="nonSxS" xmlns:wcm="http://schemas.microsoft.com/WMIConfig/2002/State" xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance"> <ComputerName>${local.host_name}</ComputerName> </component> </settings> </unattend> EOL }
あとはterraform apply
を実行すればプロビジョニング済みのWindows Serverの出来上がりです。
各要素の解説
一応各要素について解説しておきます。
ISOイメージと応答ファイルの作成
ISOイメージは以下のように定義することで応答ファイルを格納したイメージの作成が可能です。
# ISOイメージ(応答ファイル用) resource sakuracloud_cdrom "settings" { name = "${local.server_name}" # 単一ファイルを内包するISOイメージを作成する場合 content = "${local.unattend_body}" content_file_name = "Unattend.xml" }
ポイントはcontent
とcontent_file_name
の部分ですね。
Terraform for さくらのクラウドのISOイメージリソースはすでに存在するISOイメージのアップロードも可能ですが、文字列を指定して単一のファイルを内包するISOイメージの作成が行えるようになっています。
content
に作成するファイルの内容を、content_file_name
に作成するファイル名を指定すればOKです。
(なお、content_file_name
に指定した値はボリュームラベルとしても利用されます。)
ここではファイル名にUnattend.xml
を指定してますね。
content
には応答ファイルのXMLを組み立てた結果を格納した変数が指定されています。
応答ファイルには以下の内容を記載しています。
- EULA(ソフトウェア仕様許諾)ヘの同意
- ロケール/キーボードの設定
- Administratorのパスワードの設定
- コンピューター名の変更
- 指定のスクリプトを初回ログオン時に実行
- サーバ作成後に1回だけ自動ログイン
実行したいスクリプトはLocalValuesのrun_commands
に指定しています。
この例ではChocolateyをインストールし、chocolateyを用いてChrome
をインストールしています。
好みに応じてこの辺りを編集してみてください。
サーバへのISOイメージの挿入
これはサーバリソースの定義にISOイメージのIDを指定するだけでOKです。 例では以下のように指定しています。
# サーバ resource "sakuracloud_server" "server" { # ... cdrom_id = "${sakuracloud_cdrom.settings.id}" }
注意点
ISOイメージは安価とはいえお金がかかります(現時点では月額108円)。
サーバ構築後はISOイメージは利用しませんので削除してしまってもOKです。
削除する場合はtfファイルからISOイメージ関連の記述をコメントアウト & applyなどしておきましょう。
応用: WinRMを有効化してAnsibleやTerraformのプロビジョナーを利用する
簡単なスクリプト程度なら先程のrun_commands
に実行したいコマンドを書いていけばいいですが、
少し複雑なことをやる場合はやはりAnsibleなどのツールを利用するのが楽だと思います。
そのためにはWinRM
を有効にする必要があります。
この場合、以下のようにtfファイルに記載すれば良いでしょう。
#********************************************* # プロビジョニング #********************************************* # サーバ上で実行したいコマンドを指定 run_commands = [ #***************************************************************** # WinRMを有効化(5985:httpと5986:httpsポートが解放される) #***************************************************************** "powershell -Command \"Invoke-WebRequest -Uri https://raw.githubusercontent.com/ansible/ansible/devel/examples/scripts/ConfigureRemotingForAnsible.ps1 -OutFile ConfigureRemotingForAnsible.ps1\"", "powershell -Command \"powershell ConfigureRemotingForAnsible.ps1\"", "powershell -Command \"Remove-Item -path ConfigureRemotingForAnsible.ps1 -force\"", ]
この記述をしておけば、Ansibleが提供しているスクリプト(powershell)を利用してWinRMを有効化できます。
WinRMさえ有効になってしまえば以下のようにTerraformのプロビジョナーも利用できます。
# サーバ resource "sakuracloud_server" "server" { name = "${local.server_name}" disks = ["${sakuracloud_disk.disk.id}"] core = "${local.server_core}" memory = "${local.server_memory}" cdrom_id = "${sakuracloud_cdrom.settings.id}" # > WinRMを有効化しておけばプロビジョナーも利用可能 provisioner "remote-exec" { # 接続情報の指定 connection { type = "winrm" host = "${sakuracloud_server.server.ipaddress}" port = 5986 https = true insecure = true user = "Administrator" password = "${var.password}" } # サーバ上で実行するコマンド inline = [ "echo foobar", ] } }
Ansibleを利用する場合はfile
リソースなどで以下のようにインベントリファイルを作成しておくと楽でしょう。
resource "local_file" "foo" { filename = "${path.module}/hosts" content = <<EOL [windows] ${sakuracloud_server.server.ipaddress} [windows:vars] ansible_user=Administrator ansible_password=${var.password} ansible_port=5986 ansible_connection=winrm ansible_winrm_server_cert_validation=ignore EOL }
あとはansible -i hosts windows -m win_ping
みたいに実行できるはずです。
(これをlocal_exec
プロビジョナーで実行してもいいですね)
終わりに
これでWindows環境の展開が楽になりますね!! 是非ご活用ください!!!
以上です。
【モダンTerraform】意外と便利!? Miscプロバイダーたち(Templateプロバイダー編)
今回は前回の続きとしてMiscプロバイダーの中からTemplateプロバイダーについて扱います。
Templateプロバイダーとは
その名の通りテンプレート機能を提供してくれるプロバイダーです。
以下のリソースとデータソースが含まれます。
分類 | 名称 | 概要 |
---|---|---|
データソース | template_file | 単一のファイル(など)用のテンプレート機能 |
データソース | template_cloudinit_config | cloud-initのconfigファイル用テンプレート機能 |
リソース | template_dir | ディレクトリ内のテンプレートファイルに対し一括処理を行う機能 |
template_dir
だけリソースになっている点が注意ですね。
詳しくは後述しますが、template_dir
のみファイルが作成されるという作用があるためです。
それでは各リソース/データソースについて見ていきます。
template_file
データソース
単一のファイル(など)用のテンプレート機能を提供してくれます。
基本的な使い方
まず次のようなテンプレートを用意しておきます。
#!/bin/bash echo "CONSUL_ADDRESS = ${consul_address}" > /tmp/iplist
このテンプレートを描画するには以下のようにデータソースを定義します。
data "template_file" "init" { # テンプレートとして<モジュールのディレクトリ>/init.tpl を指定 template = "${file("${path.module}/init.tpl")}" # テンプレートに渡す変数の定義 vars { consul_address = "${sakuracloud_server.consul.ipaddress}" } }
あとはこのリソースのrendered
という属性を参照することで描画済み文字列が取得可能です。
# 例: スタートアップスクリプトとして利用する resource sakuracloud_note "init-script" { name = "init" content = "${data.template_file.init.rendered}" # rendered属性から描画済み文字列を参照 } # 例: プロビジョナーに渡す resource sakuracloud_server "server" { name = "server" # 描画した内容をサーバ上の/tmp/init.shに書き込み provisioner "file" { destination = "/tmp/init.sh" content = "${data.template_file.init.rendered}" } }
変数の指定
テンプレートに渡す変数は先程の例の通りvars
ブロックで指定します。
data "template_file" "init" { ... # テンプレートに渡す変数の定義 vars { consul_address = "${sakuracloud_server.consul.ipaddress}" } }
この例ではconsul_address
というキーを用いていますが、任意のキーを複数指定可能です。
vars { ipaddress = "192.2.0.1" nw_mask_len = 24 }
注意点としては値の指定にはリスト型/マップ型を指定できないということです。
# !バリデーションエラーとなります! locals { # リスト型変数 iplist = ["192.2.0.1", "192.2.0.2"] # マップ型変数 rules = { allow = "80,443" deny = "all" } } data "template_file" "init" { template = "foobar" # テンプレートに渡す変数の定義 vars { target_hosts = "${local.iplist}" # リスト型は指定不可 target_rules = "${local.rules}" # マップ型は指定不可 } }
この場合は何らかの形で文字列に変換して渡してあげましょう。
# 文字列にする例 # テンプレートに渡す変数の定義 vars { target_hosts = "${join(",", local.iplist)}" # joinで文字列化 target_rules = "${jsonencode(local.rules)}" # jsonencodeでJSON化 }
テンプレートをインラインで指定
テンプレートはファイルとして用意しておかなくてもtfファイルの中にインライン指定可能です。
data "template_file" "init" { # テンプレートをインライン指定 template = "$${consul_address}:1234" vars { consul_address = "${sakuracloud_server.consul.ipaddress}" } }
この場合、$
をエスケープして$$
として書く必要があることに注意してください。
エスケープを忘れて$
ひとつだけにした場合はテンプレート描画前にterraformが参照の解決をしようとしてしまいます。
使い所
基本的には以下のような場合に利用することになると思います。
- tfファイル中にインラインで書くには長すぎる内容を扱う場合
- 複数のリソースに展開する場合
ちょっと長い程度の文字列なら以下のようにヒアドキュメントで書くことも可能ですので、状況に応じて使い分けましょう。
resource sakuracloud_server "server" { name = "server" # 描画した内容をサーバ上の/tmp/init.shに書き込み provisioner "file" { destination = "/tmp/init.sh" # ちょっと長い程度ならヒアドキュメントで指定もあり content = <<EOL #!/bin/bash echo "CONSUL_ADDRESS = ${sakuracloud_server.consul.ipaddress}" > /tmp/iplist EOL } }
template_cloudinit_config
データソース
template_file
データソースの機能に加え、cloud-initで利用するconfigに特化した機能が追加されたデータソースです。
write-mime-multipartコマンドなどを利用せずともマルチパートなconfigを組み立てることが可能です。
以下のように利用します。
# Render a part using a `template_file` data "template_file" "script" { template = "${file("${path.module}/init.tpl")}" vars { consul_address = "${aws_instance.consul.private_ip}" } } # Render a multi-part cloudinit config making use of the part # above, and other source files data "template_cloudinit_config" "config" { gzip = true base64_encode = true # Setup hello world script to be called by the cloud-config part { filename = "init.cfg" content_type = "text/part-handler" content = "${data.template_file.script.rendered}" } part { content_type = "text/x-shellscript" content = "baz" } part { content_type = "text/x-shellscript" content = "ffbaz" } } # Start an AWS instance with the cloudinit config as user data resource "aws_instance" "web" { ami = "ami-d05e75b8" instance_type = "t2.micro" user_data = "${data.template_cloudinit_config.config.rendered}" }
これを描画すると以下のようになります(gzip/base64エンコードはoffの状態)
Content-Type: multipart/mixed; boundary="MIMEBOUNDARY" MIME-Version: 1.0 --MIMEBOUNDARY Content-Disposition: attachment; filename="init.cfg" Content-Transfer-Encoding: 7bit Content-Type: text/part-handler Mime-Version: 1.0 #!/bin/bash echo "CONSUL_ADDRESS = 192.2.0.1" > /tmp/iplist --MIMEBOUNDARY Content-Transfer-Encoding: 7bit Content-Type: text/x-shellscript Mime-Version: 1.0 baz --MIMEBOUNDARY Content-Transfer-Encoding: 7bit Content-Type: text/x-shellscript Mime-Version: 1.0 ffbaz --MIMEBOUNDARY--
template_file
と比較すると以下の属性が追加で指定可能となっています。
gzip
: 出力をgzip圧縮するか(デフォルトtrue
)base64_encode
: 出力をBASE64エンコードするか(デフォルトtrue
)part
: 各パートの内容(指定可能な属性は以下参照)file_name
: ファイル名content_type
: コンテントタイプcontent
: ボディmerge_type
: マージタイプ(詳細はドキュメントを参照)
user_dataの組み立てに便利ですね。
template_dir
リソース
template_file
データソースのディレクトリ版です。
指定のディレクトリ配下のファイルをテンプレートとみなし、一括して描画してくれます。
実際にファイル(ディレクトリも)が作成されることに注意してください。
使い方は以下の通りです。
resource "template_dir" "config" { source_dir = "${path.cwd}/source" destination_dir = "${path.cwd}/dest" vars { consul_addr = "${var.consul_addr}" } }
この例だとterraform apply
を実行するとsource
ディレクトリ配下の各ファイルをテンプレートとして読み込み、描画したものをdest
ディレクトリ配下に同名のファイルとして作成してくれます。
ちなみにtemplate_dir
リソースはIDにdestination_dir
のコンテンツから作成されたハッシュ値が用いられており、ファイル/ディレクトリの変更やリネーム、削除が行われた場合は次回のapply時に再作成されるようになっています。
template_dir
の注意点
前述の通りこのリソースはIDが宛先ディレクトリのコンテンツから作成されたハッシュとなっているため、ステートを複数人で共有していてもterraformコマンドを実行するマシンに宛先ディレクトリ(と描画後のコンテンツ)が存在しない場合はapply時に再作成が行われることとなります。
例えばステートレスなCIでterraform plan
に差分があったら通知するような仕組みを取っている場合は問題となるケースもありますので注意が必要です。
終わりに
今回はTemplateプロバイダーを紹介しました。
ちょっとしたプロビジョニングをTerraformで行う際の強力な武器となりますので是非使いこなしましょう。
次回はMiscプロバイダーの中からRandomかTLSを扱う予定です。
以上です。Enjoy!!
【モダンTerraform】意外と便利!? Miscプロバイダーたち(概要編&Nullプロバイダー編)
今回はTerraformのプロバイダーのうち、最近充実してきているMiscプロバイダーについてご紹介します。
Miscプロバイダーってなに?
最近Terraformのプロダイバーが増えてきたため、ドキュメント上プロダイバーの分類が行われました。
現在は以下のような分類がなされています。
分類 | 概要 |
---|---|
Major Cloud | いわゆる3大クラウド(AWS/Azure/GCP)+α |
Cloud | ↑以外のパブリック/プライベートクラウドやHerokuなどのPaaSなど |
Infrastructure Software | KubernetesやRancherなどの基盤系ソフトウェア(ConsulやRabbitMQなども) |
Network | CDNやDNSなどネットワーク系 |
VCS | バージョン管理システム系(Bitbucket/GitHub/GitLab) |
Monitor & System Management | モニタリングやシステム管理系(OpsGenieやPagerDutyなども) |
Database | データベース(InfluxDB/MySQL/PostgreSQL) |
Misc. | その他諸々 |
Community | サードパーティ製プロバイダー |
Misc.プロダイバーはこの中でも分類しきれなかったその他のものですね。
Miscプロバイダーにはどんなものが含まれてるの?
現在は以下のプロバイダーが含まれています。
分類 | 概要 |
---|---|
Archive | ファイルやディレクトリのアーカイブを行う(現在はzipのみ対応) |
Cobbler | Linuxのネットワークインストール環境を構築/管理してくれるツールCobbler用プロバイダー |
External | 任意のプログラムをData Sourceとして利用する |
Ignition | ContainerLinux(CoreOS)で利用されているプロビジョニングユーティリティIgnition用の構成ファイルの出力 |
Local | ローカルファイルの作成/参照を行う |
Null | 特殊な空リソース |
Random | ランダム値の生成を行う |
Template | テンプレート機能の提供 |
TLS | キーペアの生成やCSRの生成、自己署名証明書の発行など |
この中でも特によく使われるのは以下2つだと思います。
今回はこの中からNullプロバイダーについて紹介し、Templateプロバイダーやそれ以外のプロバイダーについては次回以降に紹介します。
Nullプロバイダー
NullプロバイダーはTerraformのリソースライフサイクルにおいて何も処理を行わないという特殊なリソースを提供します。
と言われてもわからないですよね。
これは通常のTerraformのリソースだけでは実現が難しいいくつかのケースに対応するためのものです。
Terraformは待ち合わせ処理が苦手
Terraformではtfファイルで定義されているリソース間の依存関係を検出し、自動的に構築順序を制御してくれます。
例えば以下のtfファイルの場合、リソースの構築順序はどうなるでしょうか?
# ディスクの定義 resource sakuracloud_disk "disk" { name = "foobar" } # サーバの定義 resource sakuracloud_server "server" { name = "foobar" # 先程定義したディスクのIDを参照 disks = ["${sakuracloud_disk.disk.id}"] }
この場合、sakuracloud_server.server
リソースはsakuracloud_disk.disk
リソースのIDを参照しているため、
sakuracloud_server.server
リソースがsakuracloud_disk.disk
に依存している
状態となります。
Terraformはサーバを作成するにはディスクが必要という状態を検出し、
- 1) ディスク
- 2) サーバ
の順に作成してくれます。
(なお、依存関係はterraform graph
コマンドで以下例のように表示できるGraphViz形式でグラフを出力してくれます)
では以下の場合はどうなるでしょうか?
# ディスクの定義(1本目) resource sakuracloud_disk "disk01" { name = "disk01" } # ディスクの定義(2本目) resource sakuracloud_disk "disk02" { name = "disk02" } # サーバの定義(1台目) resource sakuracloud_server "server01" { name = "server01" # 先程定義したディスクのIDを参照 disks = ["${sakuracloud_disk.disk01.id}"] } # サーバの定義(2台目) resource sakuracloud_server "server02" { name = "server02" # 先程定義したディスクのIDを参照 disks = ["${sakuracloud_disk.disk02.id}"] }
先程の例にディスク/サーバを追加しそれぞれ2つずつリソースを作成する例となっています。 依存関係は以下のようになります。
この場合、ディスク -> サーバの組み合わせの作成順序はこれまで通りですが、2つのディスク/サーバの作成順序はどうなるのでしょうか?
この辺りはTerraformの賢いところで、互いに関連しない(依存しない)リソースについては並列で処理が行われます。
先程の図の①の2つのディスクについては互いに関連しないので並列で作成が行われます。
しかし、中には並列で作成されると困る場面もあります。
例えばクラスタの構築などでは、先にマスターとなるノードをプロビジョニングしてからスレーブ側のノードをプロビジョニングする必要がある場合があります。
並列でサーバ作成されるとこの順序を守ることができません。
また、全てのノードがクラスタに参加した後でプロビジョニングを別途実行したいというような場合もあるでしょう。
そこでTerraformではこの問題を解決するいくつかの方法を提供しており、そのうちの一つがNullリソースです。
以下の例では2台のサーバの作成が完了してからプロビジョニングを行う例となっています。
2台のサーバの作成後というタイミング指定のためにNullリソースを利用しています。
# ...ディスクやサーバの定義(省略)... # 2台のサーバ作成後に実行するプロビジョニング locals { server_ids = ["${sakuracloud_server.server01.id}", "${sakuracloud_server.server02.id}"] } resource null_resource "provisioning" { triggers = { depends = "${join(",", local.server_ids)}" # サーバ01と02のIDを指定 } provisioner "local-exec" { command = "run_initialize_cluster_playbook.sh" } }
この例の場合の依存関係は以下のようになります。
Nullリソースのtriggers
に(localsを通じて)サーバ01/02のIDを指定することで依存関係を示しています。
依存される側が先に作成されますので、この例では結果的にサーバ2台の作成後にNullリソースに設定されたプロビジョニング処理が実行されることになります。
おまけ: 別解としてdepends_on
今回みたいに単純な例ならNullリソースでなくてもMeta-Parametersの中のdepends_on
を利用することでも順序の制御が可能です。
各リソースにdepends_on
パラメータを指定することで依存関係が指定できますので、これを利用して順序の制御を行います。
# サーバの定義(2台目) resource sakuracloud_server "server02" { # ... # 1台目のサーバに依存することを明示 # (結果的に1台目のサーバ作成後に2台目の作成が行われる) depends_on = ["sakuracloud_server.server01"] provisioner "local-exec" { command = "run_initialize_cluster_playbook.sh" } }
この方法は単純な反面、関連するリソース数が増えてくるとdepends_on
を各所に書かないといけないというデメリットもありますので適材適所で使い分けましょう。
Null データソース(今ではほぼ出番なし)
NullプロバイダーにはNullリソースのデータソース版であるNullデータソースというものも存在します。
これは以下のようにOutput用に値を参照する部分を一箇所にまとめたり、再利用するために利用します。
data "null_data_source" "values" { inputs = { all_server_ids = "${concat(aws_instance.green.*.id, aws_instance.blue.*.id)}" all_server_ips = "${concat(aws_instance.green.*.private_ip, aws_instance.blue.*.private_ip)}" } } resource "aws_elb" "main" { # ... instances = "${data.null_data_source.values.outputs["all_server_ids"]}" } output "all_server_ids" { value = "${data.null_data_source.values.outputs["all_server_ids"]}" } output "all_server_ips" { value = "${data.null_data_source.values.outputs["all_server_ips"]}" }
が、現在ではLocal Valuesの仕組みがあるためほぼ使うことはないでしょう。
Local Valuesとの違いとしてはterraform graph
への表示有無があります(Local Valuesはgraph上表示されない)が、実用上これが問題になるケースはほとんどないと思います。
ここでもやっぱりLocal Valuesを積極的に使いましょう。
終わりに
ということで今回はNullプロバイダーを扱いました。
うまく使わないと見通しの悪いtfファイルになってしまいますが、順序や依存関係の細かな調整を行うのにはNullリソースが便利ですので状況に応じて適宜使っていきましょう。
以上です。
【モダンTerraform】v0.11以降でdynamicとfor_eachが実装されるかも
今回は最近のhashicorp/terraformでの開発状況から、現時点での最新版であるv0.11.3で未実装な機能の中で個人的にかなり期待している機能について紹介します。
countパラメータとその限界
全てのリソースにはMeta-parametersが指定できる
Terraformには全てのリソースに対しMeta-parametersという属性を指定できます。
これはData Sourcesに対しても指定可能となっています。
具体的には以下のようなものがあります。(詳細はドキュメントを参照)
count (int)
リソースの作成数を指定 ※現時点ではモジュールには指定不可depends_on (list of strings)
リソースが依存するリソースを指定 -> 具体的には作成順序などが制御されるprovider (string)
マルチプロバイダーの定義をしている場合に利用するプロバイダーを指定できる
(例: AWSのリージョンごとにプロバイダー定義している場合にaws.west
みたいに指定)lifecycle (configuration block)
リソースの作成/更新/破棄の挙動を調整する
それぞれに興味深いトピックはあるのですが、今日はcount
について扱います。
countパラメータの基本的な使い方
count
パラメータは以下のように利用します。
以下の例ではディスクリソースを2つ作成しています。
resource sakuracloud_disk "disks" { name = "${format("disk-%02d", count.index+1)}" count = 2 }
count
パラメータを指定すると、そのリソースの定義内でcount.index
という属性が利用できます。
これは自身のインデックスを参照するもので、0から始まる数値型の値となっています。
これを利用することで、locals
などとの併用で各リソースに固有の値を指定しておくことが可能です。
locals { # 監視先のドメインとパスを指定 targets = [ { domain = "example.com" path = "/" }, { domain = "example.jp" path = "/foo/" }, ] } resource sakuracloud_simple_monitor "monitors" { # 自身のインデックスでマップ(targetsの各要素)を取得、キーがdomainの値を参照する target = "${lookup(locals.target[count.index], "domain"}" health_check = { protocol = "https" delay_loop = 60 path = "${lookup(locals.target[count.index], "path"}" status = "200" } count = "${length(locals.target)}" }
countが利用できない場面
上手く使えばtfファイルを非常にシンプルにしてくれるcount
ですが、利用できない場面というのがあります。
- リソースの属性
- モジュール
例えば以下の例ではリソースにsetting
という属性があるのですが、これに対してのcount
指定はできません。
resource "aws_elastic_beanstalk_environment" "myEnv" { name = "test_environment" application = "testing" setting { # !ここではcountが使えない! namespace = "aws:elasticbeanstalk:application:environment" name = "HTTP_PROXY" value = "10.1.2.1:8080" } setting { namespace = "aws:elasticbeanstalk:application:environment" name = "TMPDIR" value = "/var/myapp/tmp" } }
議論中: dynanicとfor_each
この問題はGitHub上でも解決に向けた議論が行われています。
参考: GitHub(hashicorp/terraform) - Support count in resource fields #7034
このIssueの中で提案されているのがdynamic
ブロックとfor_each
です。
これを利用して先ほどの例を書き直すと以下のようになります。
# DRAFT: まだ提案段階でv0.11時点ではこの書き方は利用できません resource "aws_elastic_beanstalk_environment" "myEnv" { name = "test_environment" application = "testing" dynamic "setting" { for_each = var.environment_variables # map型の変数を指定 content { namespace = "aws:elasticbeanstalk:application:environment" name = setting.foreach.key # 現在のイテレーションの要素は`foreach`キーで参照できる value = setting.foreach.value } } }
マップ型変数や他で定義したリソースの属性などを利用して、各要素をイテレーションしながら値の参照ができるようです。
この例だとsetting
ブロック内のfor_each
でイテレーションされる各要素はsetting.foreach
で参照でき、それぞれkey
とvalue
のように参照できるようです。
以下のようにイテレーターに名前をつけることでネストも可能なようです。
# DRAFT: Not yet integrated into Terraform, and details may change before final release dynamic "example" { for_each = var.example_items iterator = parent # 外側のループのイテレータの名前を指定 content { dynamic "example" { for_each = parent.children iterator = child # 内側のループのイテレータの名前を指定 content { value = child.value parent_value = parent.value } } } }
これは嬉しいですね!
これまでこれを行うにはプロバイダー側で親リソース/子リソースに分割して実装する必要があり、
プロバイダーの実装者としてはなかなか辛い思いをしていました。
(リソースを親子に分割すると作成順序とかロックとか色々考慮が増えるのです…)
現在の実装状況は?
本日の時点では@apparentlymart氏が実験的に実装を進めているようです。
(前出のIssue内のコメントを参照)
期待して待ちましょう!!!
以上です。